死者の如き従順

脱落者・敗北者・落伍者と連帯するブログ

四方山話20200424

 単独の記事にしがたいレベルの四方山話はこうやって記録していくことにしました。よろしくお願いいたします。

 

 今日のドラえもんBS朝日金曜19時リアタイ視聴)から振り返っていきましょう。

 

 まず「プラ酢とマイナ酢」。原作のないオリジナル道具と思われる(アニメ側で完全オリジナルを作らなきゃいけないという国民的アニメ特有の宿世(すくせ))。あるものに酢を垂らしてそれを構成する質料を増減させるという道具。ヘーゲル弁証法かな? その酢でいろいろやるという奴。のび太ドラえもんが自分の腕に垂らして筋肉増量するのマジでドーピングコンソメスープだったしロシアみたいにオリンピック参加できんくなるぞと心配になちゃたねえ。まあ作品全体としては及第点かな。

 

 次は「クモノイトン」。これは2017年11月に放送された奴ですね(早口オタク)。要はドラえもん版『Marvel's Spider-Man』です。絶対に切れないし乗っても落ちないという御都合主義的スパイディで楽しく遊んじゃおう!という趣旨の回だった。蜘蛛の糸にぶら下がっているドラえもんのび太を子どもが群がってるの完全に「これが小学生向けにアレンジした『蜘蛛の糸』かぁ~~」と突っ込んでしまった。大いなる力には責任が伴うんだなあという教育的配慮を感じた。それで、ドラえもんのび太としずかちゃんが蜘蛛の糸で天上に空中プラットフォーム「クレイドル」を作って子どもたちを永遠に遊ばせるというハーメルンの笛吹きもビックリな誘拐ビジネスを始めたわけですが、そこに義憤を抱いたラインアーク、じゃなかったジャイアンスネ夫が天上帝国を破壊しようとしていて完全に『アーマード・コア フォーアンサー』じゃんという気持ちになってしまった。身体は闘争を求めているので。これはまあまあ面白かったですね。

 余談ですが、劇中ドラえもんの挿入歌「夢をきかせて」がフルで流れて最高だった。僕は「ハッピーラッキーバースデードラえもん」と並んでこの曲が大好きなので。「二人セゾン」、「月曜日の朝、スカートを切られた」、「Where We From feat.T-pablow」と同じぐらいヘビロテしてます!!!

 

 中央公論の5月号。単独で書評や読書感想を書いてもいいのかもしれないが、まあそこまでの内容を感じなかったので、おもしろかったなーという論考だけ備忘的にピックアップしていきますね。

 コロナウイルス特集ではそれぞれ勉強になる記事が多かった。武田徹による森田朗氏へのインタビューは、たとえば「専門家会議」の立ち位置の整理や、それが政策プロセスにおいてどのような位置を占めていてどのような影響力を有しているのか、官邸や官僚との関係性はどうなのかということについて頭を整理するいい機会になった。また、小林慶一郎氏の経済対策の提言も興味深く読んだ。やはり「一律10万給付」みたいなのは、「そもそも外出んなってのに消費を喚起するようなバラマキはどうなの?」という尤もなツッコミであり、あんまり策としてよろしくないんだろうなというのは小林氏の論考を読んでいても思う。しかしこの狂乱を収めるという政治的マジックとしてのバラマキ政策は「理外の理」みたいなところがあるのかもしれない。あと、松田美佐氏のインフォデミック(コロナに関するデマやら何やらが飛び交いまくっている現況)に関する論考も面白かった。「嘘を嘘だと見抜けないとインターネットは難しい」と嘯くよりも、あいまいさに耐性をつけることというのは確かにそうだなと思いました。

 中国特集について。中国これからどうするよ系の話は中央公論っぽい中道右派的見解がずらーっと並んでいるだけだったので「いつもの」「おまたせ」ぐらいの感情しか沸かなかったのだが、興味深く思ったのは中国SFについての飯塚容氏と立原透耶氏の対談。中国SF、普通に面白そうなので読みたいのだが、有名な『三体』については三部作が全訳されたら読もうかなというぐらいの気持ちでいる。

 憲法関連の論考2本がとてもよかったですね。井上武史氏の「「九条論議」再考」についてはかなり大事なことを書いているなとおもひまひた。9条と自衛隊の両立という状況が、立憲主義の価値を掘り崩し、「解釈」というエリート主体の憲法操作を可能にする事態を析出している。横大道聡氏の「憲法を書くということ」は、文字通り「憲法に何を書き込むのか」「何故書き込むのか」というところから考察を始めており、憲法学からの大事な指摘であるように思う(ただでさえこの国は憲法の特定条文をあーだこーだ言うことに時間を費やしているので)。

 それと、将基面貴巳氏の「オリンピックと愛国」。論そのものよりも、最後の追記が気になった。「パンデミックは、近代国家が、われわれの生きる世界において究極的権威であることを見せつけている。」(p165)ご尤も。ハンガリーベトナム、韓国や台湾、シンガポールはまさに近代国家をそれぞれのやり方で徹底した。正直これらの国と比べて感染症対策で日本を腐すことは、ある一面「でしか」正しくないと思う。そしてそれ以外の見方を奪われるのはとても危険ではないかと思う。

 

 それと、朝日新聞デジタルの隔週連載フロントラインの最新記事が興味深かった。

 

 〈首相が電話「状況は大変」現金給付抗争、官邸が見せた隙〉

 https://digital.asahi.com/articles/ASN4R5DV8N4NUTFK01C.html?iref=pc_rensai_long_209_article

 

 要は減収世帯に現金30万という経済対策にブチギレた公明党が二階と組んで官邸―岸田のラインを揺さぶりまくって10万にさせたというような話。一部だけ抜粋していく。

 

 「公明は、政府に国民1人10万円の一律給付を提言していた。斉藤氏は、給付の対象が限られる30万円案を「本当に評判が悪い」とこき下ろし、「官邸の判断は大丈夫ですか」と、自民側に水を向けた。これに二階俊博幹事長(81)は「まったくだ。党の言うことを聞かないから悪いんだ」と同調し、怒りをあらわにした。その口ぶりに、部屋の空気は一段と張り詰めた。」

 「4月3日、官邸で首相との面会を終えた岸田氏は、記者団に「一定の水準まで所得が減少した世帯に30万円を支給すべきだと申し上げ、総理と認識が一致した」と表明した。目玉政策の唐突な発表に、岸田氏が率いる岸田派幹部は「首相が後押ししてくれた」と喜んだ。一方で、反発も広がった。公明幹部は「うちの提言はなんだったんだって話だろ。あり得ない。なめられてんだよ」とぶちまけた。二階氏周辺も「幹事長室に相談が一切ない」と強い不快感を示した。」

 「「1人当たり10万円、所得制限をつけないで国民に給付する。ここで決断しないと終わりですよ」。山口氏は首相に迫り、連立離脱の可能性までちらつかせた。その剣幕に押された首相は「方向性を持って検討します」などと応じ、その場を収めた。会談後、山口氏は記者団に「積極的に受け止めていただいたと理解している」と語った。」

 「山口氏は首相に電話し、補正予算案の組み替えを再度要求。衆院予算委員会の公明理事は、補正予算案の審議日程などを協議する懇談会への出席を拒み、中止に追い込んだ。「連立を組む党のやることか」。自民からは、そんな悲鳴が上がった。」

 

 普通にメチャクチャ面白くないですか。永田町に行ったらただで吉本新喜劇みたいなのが見られると思うと普通に次転職する時は永田町にしようかなと思った次第。

 ただ、敷衍して考えると、官邸官僚による政策決定モデルの限界が、今次のコロナ禍でかなり炙り出された感は否めない。今井・杉田・北村・佐伯というような「エリート」であること以上に何ら存在意義のない無脳症患者共が幅をきかせている「権力の前室」のせいで、メンツを潰される安倍さんというのは、完全にバロック悲劇の再演である。カール・シュミットが見ていたらさぞ欣喜雀躍したことだろう。

 

 最後。何についての話題かは意図的に伏せますが、パン屋再襲撃事件が望まれている気がする。この件に関しての世の定型発達的見解にはかなりうんざりしている。結局コロナが来ようが来るまいが、この国の大多数の人間は忠良で社会規範に忠実で道徳に配慮できる定型的な国民であって、それ以上になることをBボタンキャンセルし続けるのだろう。おめでたいことだ。