死者の如き従順

脱落者・敗北者・落伍者と連帯するブログ

ドラえもんのび太の検察庁法改正反対(四方山話20200517)

 職場で「自粛期間中何してた?」と聞かれたので正直に「ドラえもんのアニメをずーっと見てました」と答えたらスゲェやり場に困る笑いが返ってきたので一生テレワークでええ。もう誰とも顔を合わせたくないし世間話もしたくない(月曜も出社します!!!!最高!!!!)。

 

 「こころにささるおもいヤリ」。いいですね、本当にいい話だった。のびママが活躍するわさドラは大体神回なんですよね(のびママが小学生になる回とか)。あらすじを潤色して説明すると、母の日に土手で積んだタンポポとかいうクソオブクソをプレゼントしようとしたのび太を見て、母の気持ちを忖度した財務省理財局国有財産審理室担当課長補佐のドラえもんa.k.a.悪い事をぬけぬけとやることができる役人失格の職員が出した道具が「おもいヤリ」。槍を持った白人男性というポリコレ違反デザインのこの道具を頭につけた人間が思いやりぽかぽかことばを使うと、言われた方に「――――刺し穿つ死棘の槍」よろしく槍が放たれメチャクチャ嬉しくなっちゃうというマジで大きなお世話感半端ない道具である。この道具を乗せたのび太からタンポポをもらったのびママが嬉しくなりすぎて街中にタンポポもらったアッピルをしまくるが、結局道具の効果が切れてたところで、タンポポでものびママは嬉しかったことがわかり、のび太もよかたねえとなりドラえもんが完全にいらぬことをしたポンコツ産廃と化す回でした。これが面白くねえわけがねえだろ???

 

 「スケジュールどけい」。これは原作でも好きな回で、何故ならばいわゆる全ての「時間管理術」へ浴びせられた強烈なアイロニーなので。「いっしょうけんめいのんびりしよう」の申し子野比のび太にブチギレたドラえもん(ここでもこいつは碌なことをしない)が絶対計画通りにToDoリストと時間の平仄を合わせる激ヤバ機械を出し、そのツケを自分で払う羽目になる回だ。ここで面白いのは、このスケジュールどけいとやらがただただ「時間を守らせる」ことだけを追求した結果、したくもないのにトイレにぶち込まれたり、雨の中一人で野球をしたりするなどのひたすら徒労が続く展開だ。計画は立てよ、しかしそれは変更せよ、そしてお前のオールを漕がせるな、特に杓子定規の機械には、というわけである。

 

 検察庁法改正がにわかに話題となっている。1月に黒川・東京高検検事長が異例の勤務延長ということになった時、俺は内心「あー……ついにやらかしたなあ」と思っていた。後出しじゃんけんみたいな言い方で大変恐縮だが、本当にそう思ったのである。そもそも俺の認識では、この話の発端である法務・検察への内閣の人事介入は、2016年9月に始まっていたとみられるからだ。それは、「共謀罪」答弁で有名な林真琴元刑事局長(現名古屋高検検事長)の法務次官昇進を潰して、黒川氏を次官に昇進させた話である(ここから西川→稲田→林という検事総長継承の既定路線がおかしなことになってくる)。翌2017年には黒川氏は官邸の意向で次官を留任した。ただ、その時はまさか安倍内閣が法律解釈を慌てて変更してまで黒川氏の定年を延長するという奇策に打って出るとは思わなかったので、黒川氏の年齢を考えると林氏の路線は変わらんでしょうねと観測していた。だが安倍内閣はヒプマイ実写化レベルの「解釈違いfrom公式」を発揮し始めた。こうした解釈が目に見えておかしいのは、多くの弁護士会も声明を出して指摘しているのでそれに譲る。そして今壮大な「後出しじゃんけん」と見なされてもおかしくない同法改正を進めようとしているわけだ。

 はっきり言って問題の核心はここでしかない。要するに現内閣への「不信感」を多くの国民に対して決定的にした出来事は黒川氏の勤務延長であり、検察庁法の改正そのものが問題になっているわけではない。もちろん、その後の通常国会で明らかになった、勤務延長にまつわるガバガバ法解釈やユルユル答弁(人事院の巻き込まれ事故、口頭決裁、地検が逃げたなどなど……)、そしてコロナ対応のお粗末さもかなりのガソリンになったと思う(たとえば「アベノマスク」や星野源の動画に対して、既に多くの芸能人が懐疑的な見方を呈していた。何で検察庁法なんてマイナーな問題に芸能人が口出しを……と思う向きは、こうした政治への不満の種が既にコロナ禍で巻かれていたと考えると分かりやすいのではないだろうか)。また、この安倍内閣によって行われた「解釈」は大体碌なもんでもなかったということを思い起こすべきである(一応言っておくと俺は集団的自衛権の行使には賛成の立場であるが、改憲が先だろと率直に思ったのである。もちろん、諸々の解釈を積み立てて、平和憲法自衛隊のバランスがうまく保たれていて今があるんだ!というのも見識としては尊重するが……)。ある人が「黒川氏の問題と、検察庁法改正の問題は、後者は国家公務員全体の定年延長という別の問題でもあるわけで、切り離して考えるべきでは?」と指摘していて、それは至極もっともなのだが、ただそれを切り離せなくしたのは現内閣のお粗末さなので、今さら言っても詮なきことだなあとオモタ。

 とまあ、こんな感じで国民が燃え上がってしまっているわけで、個人的には今国会でこれを通す必要は与党サイドにもないし(あるとすれば陳腐なプライドだが、そんなもんこそステイホームさせておいて公共の言論に持ち出すべきではない)、道義的かつ政治的にも通すべきではないと思う。黒川氏の勤務はもう延長されているので、稲田氏が「やだやだ!!コングレスやるまではいるんだい!!!河井宇宙人(雌・雄)の首をスティーブン・バノンに送りつけるんだい!!!!」と言ったとしても、黒川検事総長は既定路線である。やりたいことはもうやっているわけだから、そこからさらに無理を押し通せば必ずやとんでもない反動がある。今度のこれは確実に選挙へ影響を及ぼすだろう(逆に影響がなかったら日本国民は言葉通りの意味で健忘症であることを世界に暴露する羽目になる。その時我々はもはやNYTやガーディアンの社説を持ち出すリベラル出羽守と一緒にPrime Minister Abeを笑うことができるだろうか?)。自民党の勝利は揺るがないとしても、投票率が上がり、個々の議員の得票率や比例の得票数が下がって、彼らに「その次の選挙」を思わせることは、襟を正すラストチャンスという警告としては十分すぎるのではないか。

 とまあ、同法案改正についてn番煎じみたいな雑文を垂れ流してきたわけですが、一方で別の方向に思うことがないでもない。いわゆる「役職定年の例外」も、黒川氏の問題と切り離して考えれば(今の状況でそれはほぼ不可能に近いが)、多分「まあそういうこともあるよね」となっていたのではないか。検事長検事総長を内閣の意向で定年延長して、人事における一定程度のコントロールを政治側から可能にするというのは、見方を変えれば検察人事への民主的統制の一手段と言えなくもない。権力の専横に対抗する最後の砦としての検察組織は、一方で「公権力」であることもゆめゆめ忘れてはなるまい。フロッピーディスク改竄などに代表されるような腐敗を免れえないのは、あらゆる権力の宿命でもある。そしてその時、検察へのチェック・アンド・バランスも問題となる(付言すると、検察官適格審査会とかいうのはお話にならないという率直な印象がある)。造船疑獄やロッキード陸山会、さらには尖閣諸島の中国漁船といった日本社会を揺るがしてきた数々の問題を思い起こせば、我々は単純にある時は検察、ある時は政治というような立場をコロコロ変えるのではなく、検察と政治のバランスというのをその都度しっかり考えなければならないのではないか。

 とはいえ、「バランスを考えなきゃいけない」という表現はほぼ何も言っていないに等しいので、俺個人の立場を明らかにしておくと、政府も検察も全く信用できません。俺にできるのは次の選挙でも野党に投票するのと、ルイ14世が中世の亡霊と化すような日本の世界史教育の敗北じみた怪文書を面白がるぐらいである(念のために当該文書の「重箱の隅」以外に文句をつけるならば、かの文書に滲み出ていた検察の「自意識」みたいなのも相対的に見つめ直した方がいいだろうということだ。個人的には、法務官僚の多くを検事が占め、かつ法務・検察首脳で人事草案を固めるという今の法務省人事のあり方がいいとは決して思わない)。

 

 ※黒川氏の勤務延長問題が降って沸いた話でも何でもなく、2016年から布石は打たれていたということについて、遡及的に理解を深めたいという方には、村山治という元朝日のベテラン司法記者が2016年から「法と経済」ジャーナルにおいてかなり芯食った記事を書いているので是非とも読んでほしい。検察や法務省という組織の特性を含めて、問題の当初からかなり丁寧に書かれている記事で、恐らく後追いの記事(森功の奴とか。あれは官邸官僚の北村や和田がこの問題でどう立ち回ったかという独自の視点もあるけど)の元ネタではないかなと思っている。有料ですが、リンクを貼っておきます。これらの記事を読むために1か月だけ1000円払っても全然いいと思う。ちなみに家で朝日新聞をとっています!という公安の監視対象みたいな人は朝日新聞デジタルに登録して、それと自分んちの住所を紐づければタダで読めます。

 

judiciary.asahi.com

 

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 また、最高裁判事の弁護士枠に、これまでの慣例であった日弁連の推薦した人が採用されなかった問題も、安倍内閣の司法への介入という大きな文脈からは、黒川氏問題と相通するものがあると思うので、記事を紹介する。思うにこうした問題が暴発する懸念は、既に2017年頃から多くの法曹関係者が持っていたのかもしれない。

 

diamond.jp

 

 それとは別に、今回の記事を書くにあたって現代ビジネスの以下の記事がとても参考になった。

 

gendai.ismedia.jp

 

 ※※超絶余談だが、俺はスピード違反で罰金刑を喰らった犯罪者(でもお前なんかに負けるわきゃないな@呂布カルマ)なので検察にお世話になったことがある。オービスで摘発され、警察に「この写真に映ってるのあんた?」と聞かれ「はいそうです」と言った後、某地検に出頭した。で、検事に取り調べされるのかなあワクワクと思っていたら、検取事務官でスゲェガッカリしましたよ(断っておくとその事務官の人はスゲェいい人だったマジ感謝)。まあ略式なのでそりゃそうなんですけどね。何でこの話を書いたかというと、書いている俺は碌でもない人間なのでそんなあてにしないでねという意味です。どの口が何言うかが肝心なので。

 

 閑話休題!!!!!!!!ずーっと自宅待機してステホってたのだが、先週になってとうとう職場に出勤してしまったので、ええいもう感染リスクは変わらへんのやしウチ我慢できへん!!!と言わんばかりに外に出て、電車に乗って、神保町に行ってきた。本を買うのが不要不急の外出だとかいうバカを轢き殺す重戦車その戦車拙者が運転者なので。ただ、本当に電車もほとんど人がいなかったし、唯一休日も開店していた三省堂書店も開店10分後ぐらいに入ったら1階のフロアに10人もいなかったと思う。そんなわけでソーシャル・ディスタンスが自然に確保されたので、意気揚々とフロアを闊歩し、諸々買ってしまった。村上陽一郎の『ペスト大流行』とか武田将明訳のデフォー『ペストの記憶』とか、Amazonでわけわからんぐらい高騰している本を定価通りに変えたのは嬉しかったし、リアル書店のありがたみを改めて感じさせられた。講談社学術文庫レヴィナスアダム・スミスサルトルの新訳、それと岩波現代文庫の『ロールズ政治哲学講義』や『つぶやきの政治思想』も買っておきたかったが、もう予算オーバーなので後回しにしました(多分中公の新刊と一緒に買うと思ふ)。やっぱり本をバカ買いするのは気持ちいいですね。

 

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これは今日買った本たちで計約26000円也。大学時代図書館で借りて2回読んだ西村稔の『文士と官僚』が売っていて思わず買ってしまった。岩波文庫学術書とかは地元にほとんど売っていないのでここで買うしかないのです……。

 あとはしょうもない四方山話を箇条書きしていきます。

 ・Star Wars:Jedi Fallen Orderをクリアしました。メチャクチャ面白かったですね、ここ最近のやったゲームの中では一番好きかもしれない。ソウルライクなスターウォーズゲームということで、オーダー66を生き残ったパダワンになってフォースやライトセーバーを操るわけです。ただパダワンなので、ストームトルーパーに数で攻められてよく死んだ。ルーカスフィルムも認めたエピソード3と4の間の正史なので、ストーリーもしっかりできていたと思う。これのおかげで、スターウォーズをもう一回全部最初から見直そうと思っている。そういえば新三部作は見たことがないし、ローグ・ワンやハン・ソロも同じくである。俺が大好きなボバ・フェットが次シーズンで出てくるらしい『マンダロリアン』も気になっていますが。

 ・一昨日ソポクレスを全部読んだので、一旦読書を打ち止めにしてFar Cry 5に着手します。Epic Gameのセールということで1000円で手に入れたのだが、どうもグローバル版をダウンロードしたらしく、所々日本語字幕がないし日本語音声がなくてブチギレた。で、試しにUplay上から再ダウンロードしたら、日本語になっていた。でもこれって大丈夫なんだろうか……?

 ・テレワーク、慣れないですね。というか俺はマジでテンケテキテキO型なのでサボれたらサボりまくりなのである。そして、テレワークだからか何かみんな定時にルーズになっていて怖い。生活が汚されていく……。